はじめに
EMC試験(放射エミッション測定)において、スペクトラムアナライザで測定した「電圧」を「電界強度」に変換するために不可欠なのが**「アンテナファクター(AF:Antenna Factor)」**です。
実務では校正データ(グラフ)として与えられることが多いですが、その定義や計算の仕組みを理解しておくことは、測定精度の向上やデバッグにおいて非常に重要です。
本記事では、アンテナファクターの基本定義から、絶対利得・相対利得を用いた3つの計算式について詳しく解説します。

これらの式はiNARTEでの試験にも使えるため効果的です。
アンテナの違いについては以下の記事にまとめています。
アンテナファクター(AF)の定義
アンテナファクターとは、アンテナに入射する「電界強度 $E$」と、アンテナの出力端子に現れる「電圧 $V$」の比率のことです。
$$E = V \cdot AF$$
対数(dB)で表記する場合は、以下の加算式で電界強度を算出できます。
$$E \text{ [dB}\mu\text{V/m]} = V \text{ [dB}\mu\text{V]} + AF \text{ [dB/m]}$$
アンテナファクターの3つの計算式
アンテナの利得や周波数の条件によって、以下の3つの計算式を使い分けます。
これらの式はiNARTEでの試験にも使えるため効果的です。
1. 絶対利得を用いた基本式(その1)
周波数 $f$ とアンテナの絶対利得 $G_0$ から算出する最も一般的な形式です。
$$AF = \frac{2f}{8.71 \sqrt{G_0 Z_0}}$$
- $f$:周波数 [Hz]
- $G_0$:アンテナ絶対利得(真数)
- $Z_0$:アンテナインピーダンス(通常は $50\Omega$)
2. 波長と絶対利得を用いた式(その2)
波長 $\lambda$ を用いて記述される形式です。物理的な意味合い(アンテナの実効長など)を考える際に有用です。
$$AF = \frac{4\pi}{\lambda} \cdot \sqrt{\frac{30}{Z_0 G_0}}$$
- $\lambda$:波長 [m]
- $c_0$:光速(約 $2.998 \times 10^8$ m/s)
3. 相対利得を用いた式(その3)
半波長ダイポールアンテナに対する利得(相対利得 $G_r$)を用いて算出する場合の式です。
$$AF = \frac{2f}{11.16 \sqrt{G_r Z_0}}$$
- $G_r$:アンテナ相対利得(真数)
各パラメータの単位と数値例
計算を行う際は、単位の整合性に注意が必要です。
| 記号 | パラメータ名 | 単位 |
| $f$ | 周波数 | Hz |
| $G_0$ | アンテナ絶対利得 | – |
| $Z_0$ | アンテナインピーダンス | $\Omega$ |
| $\lambda$ | 波長 | m |
例えば、周波数 $308$ MHz、利得 $1$($0$ dBi)、インピーダンス $50\Omega$ の場合、アンテナファクターは約 $20$ dB/m となります。
まとめ
アンテナファクターは、EMC測定における「翻訳機」のような役割を果たします。
- 電界強度を知るために必須の係数
- 周波数やアンテナの利得によって変化する
- 実務では $E = V + AF$ の足し算で活用する
これらの式を理解しておくことで、アンテナの校正証明書の見方や、測定システムの不確かさ評価への理解が深まります。

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