はじめに
EMC対策において「コモンモードノイズの方が放射効率が高い」という言葉を耳にすることは多いでしょう。
しかし、実際にどれくらいの差が出るのかを計算式で意識している方は少ないかもしれません。
本記事では、平行2線ケーブルから発生する電界強度の計算式を用い、ノーマルモードとコモンモードが作る電界強度の違いを定量的に解説します。
1. ノーマルモードによる放射電界強度
ノーマルモード(ディファレンシャルモード)は、信号の往復による電流ループから放射されます。その最大放射方向における距離 $d$ での電界強度 $E_N$ は、以下の式で表されます。
$$E_N = \frac{4\pi^2 \times 10^{-7} f^2 I_N \ell s}{c_0 d}$$
- $f$:周波数 [Hz]
- $I_N$:ノーマルモード電流 [A]
- $\ell$:線路の長さ [m]
- $s$:線間距離 [m]
- $c_0$:真空中の光速 [m/s]
- $d$:測定距離 [m]
特徴:
電界強度が周波数の2乗($f^2$)に比例し、ループ面積($\ell \times s$)が大きいほど放射が強くなります。
2. コモンモードによる放射電界強度
一方、コモンモードはケーブル全体がひとつのアンテナとして機能し、大地などへの帰路を通じて放射されます。距離 $d$ での電界強度 $E_C$ は、以下の式で計算されます。
$$E_C = \frac{4\pi \times 10^{-7} f I_C \ell}{d}$$
- $I_C$:コモンモード電流 [A]
特徴:
電界強度は周波数の1乗($f$)に比例します。注目すべきは、ノーマルモードと異なり「線間距離 $s$」の項がないため、わずかな電流でも効率よく放射されてしまう点です。
3. 実例による比較(どっちが強い?)
具体的な数値を入れて比較してみましょう。
| パラメータ | ノーマルモード例 | コモンモード例 |
| 周波数 $f$ | $250$ MHz | $250$ MHz |
| 電流 $I$ | $1$ mA | $2$ $\mu$A |
| 線路長 $\ell$ | $1$ m | $1$ m |
| 線間距離 $s$ | $1$ mm | – |
| 距離 $d$ | $10$ m | $10$ m |
この条件で計算すると、ノーマルモード電流が $1$ mA も流れているのに対し、コモンモード電流はわずか $2$ $\mu$A(500分の1以下) ですが、放射電界強度はコモンモードの方が圧倒的に大きくなるケースがあります。
これが「ノイズ対策の主役はコモンモード」と言われる理由です。
まとめ
- ノーマルモード:電流ループを小さくする($s$ を小さくする)ことで抑制可能。
- コモンモード:微細な電流でも放射しやすいため、フィルタやシールドによる電流自体の抑制が必須。
設計段階でリターンパスを意識し、コモンモードへの変換(モード変換)を防ぐことがEMC合格の鍵となります。

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