こんにちは。Noiseです。
Noiseはメーカー勤務でEMCエンジニアとして勤務しています。
今回はEMC評価で必ず使用する、LISNについて書いていきます。
最後まで読んでいただけると幸いです。
LISNとは?
そもそもLISNとは何でしょうか。
一言でいうと
「インピーダンスを管理するフィルタ」です。
車載向けの試験(CISPR25)では、下記のものが使用されていることが多いですね。
CISPR25については過去記事でまとめていますので、参考にしてください。
LISNには下記のように様々な呼び名があります。
- LISN(Line Impedance Stabilization Network)
- 電源疑似回路網
- AMN(artificial mains network)
これらすべては同じような認識でOKです。
内部回路
フィルタということなので、もちろん内部回路があります。
内部回路は下記が一般的です。
LISNの内部回路はπ型フィルタですね。
ちなみにこちらはQucsという回路シミュレーターを使用して作成しています。
使用する理由
使用用途としては下記3点があります。
- インピーダンスの管理
- 伝導エミッションの測定
- 電源ノイズのフィルタリング
順にみていきましょう。
インピーダンスの管理
内部回路の部分でも示したように、LISNはπ型フィルターになっています。
インピーダンス管理とはEUT側(製品、供試品側、右側)から見たインピーダンスを管理しています。
インピーダンスは下記になります。
横軸が周波数で1kHz~100MHz、縦軸がインピーダンスです。
グラフからわかるように70kHzで共振していることがわかります。
これはL1の5uHとC2の1uFの要素で発生する直列共振ですので、この付近の周波数で動作する製品は注意が必要です。
またCISPR25での測定は150kHzからなので、150kHzのLISNのインピーダンスが低い=伝導ノイズ流れやすいので注意が必要です。
また10MHz付近の周波数をみると47.1Ωくらいに安定していることがわかります。
これがLISNの役割の一つでもある、インピーダンスの管理となります。
約50Ω(1kΩと50Ωの並列合成抵抗)で管理することがLISNの役割ですね。
インピーダンスを管理することによって、どこの外部サイトで測定しても再現性のあるデータが取れるようすることが目的です。
伝導エミッションの測定
CISPR25の電圧法ではLISNを使用した測定があります。
測定は下記のようにR2の50Ω抵抗をLISNの選択スイッチで外部接続し、EMIレシーバーと接続して測定します。
つまり、C1ラインを流れる電流からの起電圧を測定する認識ですね。
この電圧の限度値をCISPR25では規定しています。
電源ノイズのフィルタリング
LISNの電源側には製品を動作させるために必要な電源を接続します。
バッテリやドロッパー電源など、スイッチングしない電源では問題がありませんが、スイッチング電源を使用すると、スイッチング電源のノイズが製品に重畳してしまい、測定したデータがどちらのノイズ成分なのかわからなくなってしまいます。
そのために、LISNのフィルタリングは必要となります。
※厳密にはスイッチング電源とLISNの間には、電波暗室用のフィルタが入っているので、大まかなノイズは減衰させることができます。
下記は電源側から見た減衰特性です。
横軸が周波数で1kHz~1GHz、縦軸がS21の減衰特性です。
100kHzで23dBほどの減衰特性があります。
まとめ
今回はLISNについての説明を記載しました。
LISNはEMC評価を実施するには必ず必要なものなので、ぜひ内部回路や特性は覚えておくようにしましょう。
以上です。
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