EMCエンジニアの休日

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EMCにおける媒質中の伝搬速度とその影響:計算式と対策を解説



こんにちは。Noiseです。

Noiseはメーカー勤務でiNARTE EMCエンジニアとして勤務しています。

EMCエンジニアとはこちらの記事で解説

emc-noise.com

 

 

今回はEMC対策において、重要な要素の1つである媒質中の伝搬速度について解説します。

 

媒質中の電磁波の伝搬速度が遅い場合や速い場合には、EMC問題が発生することがあります。

そこで、今回は媒質中の伝搬速度について解説し、EMC対策においてどのように考慮すべきかをまとめてご紹介します。

 

この記事を読むとわかること。

 

  • 媒質中の伝搬速度はEMC対策に重要
  • 媒質中の伝搬速度が遅いとEMC問題が発生する可能性がある
  • 媒質中の伝搬速度が速いとEMC問題が発生する可能性がある

最後まで読んでいただけると幸いです。

 

 

 

媒質中の電磁波の伝搬速度とは何か

 

媒質中の電磁波の伝搬速度とは、電磁波が媒質内を伝搬する速度のことです。

 

媒質とは、空気、水、金属、プラスチックなどの物質のことを指し、媒質中での電磁波の伝搬速度は、真空中での光速よりも遅くなります

 

具体的な計算式と例

 

計算式

媒質中の電磁波の伝搬速度は、媒質の誘電率 \(\epsilon_r\)透磁率 \(\mu_r\)によって決定されます。真空中の電磁波の速度 \(c\)に対する媒質中の電磁波の速度は、下記の式で表されます。

 

\[ v_p = \frac{c}{\sqrt{\epsilon_r \mu_r}} \]

 

ここで、c は真空中での光速、√は平方根を表します。

 

この式を用いることで、特定の媒質中での電磁波の伝搬速度を計算することができます。

 

ただし、媒質の物理的な構造や特性によって、伝搬速度が変化することがありますので、実際の測定値と異なる場合があります。

 

参考で具体的な表を添付します。

 

媒質 誘電率 εr 透磁率 μr
真空 1 1
空気 1.0006 1.0000004
ポリエステルフィルム 3.2 1
ポリ塩化ビニル(PVC) 3.3-7.3 1
ポリウレタン 1.7-7.5 1
ポリカーボネート 2.9-3.2 1

 

具体例

以下に、例として空気とプラスチックの場合の媒質中の伝搬速度の計算を示します。

 

空気の場合

 

空気の誘電率は約1で、透磁率は真空中の透磁率に非常に近いため、 εr ≈ 1, μr ≈ 1 とみなすことができます。

 

よって、空気中の電磁波の伝搬速度 vp は以下のようになります。

 

 

vp = c / √(εr * μr) = c / √(1 * 1) ≒ 299,792,458 m/s

 

プラスチックの場合


プラスチックの種類や形状によって、誘電率透磁率が異なるため、以下では一例としてポリプロピレンの場合を考えます。

 

ポリプロピレン誘電率は約2.3で、透磁率は真空中の透磁率に非常に近いため、 ε_r ≈ 2.3, μ_r ≈ 1 とみなすことができます。

 

よって、ポリプロピレン中の電磁波の伝搬速度 v_p は以下のようになります。

 

vp = c / √(εr * μr) = c / √(2.3 * 1) ≈ 206,882,035 m/s

 

このように、媒質中の伝搬速度は媒質の物理的な特性によって異なることがわかります。

 

 

媒質中の伝搬速度の影響が及ぼすEMCへの影響

 

媒質中の伝搬速度が影響を及ぼすEMCの例としては、以下のようなものがあります。

 

媒質中の伝搬速度が遅い場合

信号が媒質の境界面で反射したり、遅延したりすることがあり、それが原因で信号の波形が歪んだり、ノイズが発生したりすることがあります。

これはEMC問題の原因となることがあります。


媒質中の伝搬速度が速い場合

 

信号の波形が変形し、信号が混信したり、耐電圧レベルが低下したりすることがあります。

これもEMC問題の原因となることがあります。


したがって、媒質中の伝搬速度は、EMC対策において重要な要素であることがわかります。

 

 

媒質中の伝搬速度が遅い場合の対策

 

媒質中の伝搬速度が遅い場合には、以下のような対策が考えられます。

 

ケーブルの長さを短くする

 

ケーブルの長さを短くすることで、信号が伝搬する距離を短くし、遅延を減らすことができます。

 

信号の周波数帯域を広げる

 

信号の周波数帯域を広げることで、波長が短くなり、信号が伝搬する際の遅延が減ります。

 

媒質を変える

 

媒質を変えることで、伝搬速度を上げることができます。例えば、空気中での伝搬速度は比較的速いため、ケーブルを空気中に敷設することで遅延を減らすことができます。

 

これらの対策を適切に組み合わせることで、媒質中の伝搬速度が遅い場合でも、EMCに影響を与えずに信号を伝送することができます。

 

 

 

媒質中の伝搬速度が速い場合の対策

媒質中の伝搬速度が速い場合には、以下のような対策が考えられます。

 

高速デバイスを使用する


伝送速度が高いデバイスを使用することで、伝搬速度が速い媒質中でも信号を高速に伝送することができます。

 

ケーブルのインピーダンスを調整する


伝搬速度が速い場合には、ケーブルのインピーダンスを調整することで反射を抑え、信号の伝送効率を高めることができます。

 

電源ノイズ対策を行う


伝搬速度が速い場合には、電源ノイズが増幅される可能性があるため、電源ノイズ対策を行うことで信号品質を維持することができます。

 

エンジニアリング設計による対策


伝搬速度が速い場合には、配線やパッケージング、基板設計などのエンジニアリング設計による対策が有効です。

例えば、配線の長さを短くすることで、信号の遅延を減らし、信号の遅延差による問題を解消することができます。

 

これらの対策を適切に組み合わせることで、媒質中の伝搬速度が速い場合でも、EMCに影響を与えずに信号を高速に伝送することができます。

 

まとめと今後の展望

 

本記事では、媒質中の伝搬速度がEMCに与える影響について解説し、その対策についても述べました。

 

媒質中の伝搬速度は、信号の遅延や反射、クロストークなどの問題を引き起こす可能性があります。

そのため、信号伝送の速度や品質を維持するためには、媒質中の伝搬速度を正確に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

 

また、媒質中の伝搬速度を計算する方法や、伝搬速度が遅い場合と速い場合の対策について解説しました。

さらに、伝搬速度がEMCに与える影響についても詳しく説明しました。

 

今後の展望としては、新しい素材や技術の発展により、媒質中の伝搬速度が変化する可能性があります。

そのため、この問題に対する解決策を常に研究し、最新の情報を追いかけることが重要です。

機器やシステムの高速化に伴い、媒質中の伝搬速度がさらに重要な問題となってくると考えられます。

 

おすすめ書籍

媒質中の伝搬速度について学ぶには、以下の書籍がおすすめです。

電磁波の基礎的な内容から、応用まで幅広く解説されている参考書です。特に、媒質中の伝搬速度に関する内容が詳しく解説されています。

 

 

以上です。

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